愛猫のステファニーがときどき帰ってこない夜があった。
心配になりながらも、いつも満ち足りた表情で帰ってくるので、なんだかとても不思議に思い、首輪に手紙をくくりつけてみた。
「時折お世話になっているかと思います、ステファニーの飼い主の渡辺です。どこでお世話になってるのでしょうか?電話番号は・・・・よろしければお返事のお手紙かでんわください。」
さっそくステファニーが帰ってこなくなった翌日の晩、家の電話が鳴った。
「あの、すいません、猫ちゃんの件で・・・・。近藤といいます」
その声は、ウグイス嬢のような素敵な声だった。
「どうもどうも、どちらにお世話になってるんでしょうか」
「青葉マンションの3階ですが。」
「えっ」
驚いた。我が家の下の階だったのだ。
さっそく人形焼を手土産に、近藤さんの家にいってみた。
玄関から出てきた彼女は、天使のような微笑をする美女だった。
「すいません、ステファニーちゃん、うちのダイちゃんととっても仲がいいんです。それで通ってくるようになって。」
家の中では、ステファニーが綺麗な白い猫と寄り添って寝ていた。
「ほんとだ、仲良しなんですね。これ、お土産です。」
彼女がお茶を入れている最中も、二匹はじゃれあったり寄り添ったりしていた。
「なんだか、相思相愛って感じで、見ていてうらやましいわ。」
彼女がため息混じりにつぶやいた。せつなげな表情だった。
「おひとりなんですか。」
彼女はうなずいた。うっすらと目には涙が。
僕は思い切って言った。
「じゃあ、僕たちも、猫ちゃんと同じように、相思相愛になりませんか。」
彼女の小さな肉体を、思わずギュっと抱きしめた。
猫よりもたよりなげに、彼女は僕に身を、ゆだねてきたのだった。
ステファニー、今夜は邪魔するんじゃないぞ!!!
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