スイカが地下鉄でもバスでも使えるようになった首都圏です。
奈津子はパスモを買うべく、駅の長い列に並んでいた。
今日は特別バージョンの発売なのだ。
400人を超えるだろうか。3月といえども寒い中、よくもまあ並んでいるものだ。物好きな連中だ。
そして、奈津子もまた、物好きな自分だと自嘲気味に笑っていたのだった。
こんな田舎の駅に・・・・並んでいるものね、みんな。
奈津子のお目当ての彼、悟は、鉄道大好きな青年だった。
きっとここでゲットして、悟にプレゼントすれば、彼のハートもゲットできるかもしれないわ!
並ぶ奈津子に呼びかける男性がいた。
「あの、すいません。」
奈津子は振り返るとびっくりした。悟をはるかにしのぐハンサムな男だったのだ。
「僕、2枚買ったんで一枚いかがですか?」
「エッ!」
奈津子は大きな声で叫びそうになって、ぐっとこらえた。
並んでるほかの人に聞かれたら大変だわ!
「ぜひ、わけてください。」
そういって奈津子は列を離れ、男のあとをついて歩いていった。
奈津子は男の車に乗った。買ったパスモは別の場所にあるから連れて行ってくれるんだそうだ。
1時間くらい車が走っただろうか、なんとなく田舎の路肩に、車はとまった。
「あの・・・・パスモは・・・。」
そういった奈津子のくちびるを、男がくちびるでふさいだのだった。
「アッ!」
あまりに激しい男の口づけに、奈津子はすっかりメロメロになってしまった。
男は野獣のように奈津子の服をはぎとり、乳首に吸い付いた。
「アアッ」
熱く激しい男の愛撫に、奈津子は理性を失ってしまった。男のブリーフをはぎとり、夢中で大きくそそり立ったそれにしゃぶりついたのだった。
ひょっとして・・・・私・・・・だまされたのかしら・・・・
奈津子がふと思ったのは、4度目のセックスの後だった。
しかし、男のがっしりとした胸に抱かれている今は、パスモなどもはや、どうでもよかったのだ。
ふたりの行為は夜まで続き、男は奈津子の家まで送ってくれた。
「また・・・・会ってくれますか・・・。」
奈津子は遠慮がちに聞いた。
「もちろんさ、このパスモを使っておいでよ」
男は、パスモを奈津子に手渡した。
本当にパスモをくれた・・・・奈津子は嬉しさでいっぱいになり、男を見送ったのだった。
帰宅して、よく見ると
「PASNO」
と書かれたカードがそこにあった。
「PAS・・・・NO?!!!」
やはり、奈津子はだまされたのだと気づいた。しかし、男との激しいセックスの思い出が
もはやパスモなどどうでもよくさせていたのだった。
悟くん・・・ごめんなさい・・・・ゲットできなかったわ・・・・
PASMOならぬ、PASNOカードを、奈津子はゴミ箱に捨てた。
「PASMOカード、最初の1000枚に誤植発見!PASMOのMがNに!!!」
そんな報道がなされ、PASNOカードは、またたく間に10万円もの値がつくコレクターズ・アイテムになったのは、それから1ヶ月後のことだった。
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